7/4 ポイント&結果

日本は、1500兆円に及ぶ家計金融資産、蘇った銀行、金融分野で海外勢の参入を妨げてきた規制の自由化が進行していることを何かとアピールしたがる。しかし、改革の規模が小さ過ぎ、スピードが遅すぎるとの批判は多く、既に投資家の関心は成長が著しい中国やインドに移っている。
政府関係者はその流れを引き戻すことに意欲を示す。6月に成立した改正金融商品取引法は銀行と証券会社の間の垣根を低くし、欧米勢が力を入れている排出量取引など新規ビジネスへの参入を可能にした。税制についても見直し、ヘッジファンドなど海外のファンドが日本への投資で得る運用益について二重課税されることがないように変更した。
金融庁の佐藤隆文長官は今週行われたロイター・インベストメント・サミットで「日本では不良債権問題が終結し、世界市場で続いている混乱からの傷も浅い。今まさに日本にとって他の市場との差を埋める好機だ」と語った。「われわれが目指すのは、東京を世界を代表する、そして、アジアでNO.1の金融センターにすることだ」という。
日本が金融センターとして「売り」にするのは、長い間安全資産のまま、低い利回りしか生み出さない形で眠っている巨大な富だ。東京証券取引所の斉藤惇社長はロイターサミットで「日本には非常に安定した良質の資金がある。われわれはこの資金をできるだけ効率的に使われるようにしたいと望んでいる」と語った。
しかし、シンガポールや香港のように税率が低く、規制の透明性も高く、英語が広く使われ、移民政策も柔軟で多様な文化を持つアジアのライバルに対して日本は競争できないと厳しくみる向きもある。
香港のニューエッジ・グループのシニア・ストラテジスト、カービー・デイリー氏は「東京がこの地域の金融センターになる機会は過ぎ去った」と指摘する。同氏は「5年、10年前と比較すると、東京は中国に比べて世界の経済や金融界における地位が低下している。直観的に言えば、東京にとって潮の流れが変わったということだ」と語る。
実際、アジア全域でビジネスを展開している金融機関のなかには、本拠地を東京から他のアジアの都市に移したり、各地に分散したりしたケースもある。東京にアジアの本部を置くリーマン・ブラザーズ(LEH.N)は、過去18カ月の間に外為と商品部門の拠点をシンガポールに、株式と投資銀行の拠点を香港に移している。
<いくつもの壁>
日本は、金融市場に海外投資家を呼び込む上で「ハード」と「ソフト」の両方の壁にふさがれている。ハードの壁には株主の権利が必ずしも常に優先されない企業文化や海外に見劣りする企業統治(コーポレートガバナンス)などが含まれる。
東証の斉藤社長は「独立系、または中立的な機関投資家が日本には足りない」ことが企業統治の改善を遅らせている要因と分析している。
ソフトの壁としては2カ国語を話す人材が不足していることや、香港やシンガポールでは駐在員にとって当たり前の外国人乳母の雇用を阻む移民規制などが挙げられる。
このほか、些細なことではあるが成田空港から東京都心までの距離や世界基準と異なる携帯電話網なども「日本はアジアの他の都市に比べてビジネスをする上で利便性が劣る」との印象を強くさせている。
文化の壁もある。
英人材あっせん会社ロバート・ウォルターズの日本法人で代表取締役社長を務めるケビン・ギブソン氏によれば「日本の組織と外資系銀行の間での労働の流動性は非常に低い」。
この壁により、日本の金融機関は本格的なグローバル競争にさらされていないとも言える。それが奏功して日本の金融機関は米サブプライムローン(信用力の低い借り手向け住宅融資)問題による損失が欧米の金融機関に比べ軽微で済んだが、自国を中心に事業を展開する日本の金融機関は欧米勢に比べ高度な金融技術を備えていないとの見方もできる。
外資系アクティビストファンドは日本で失敗を重ねている。議決権行使により日本の企業を変えようとしたが、その過程で逆に日本人による抵抗ムードを強めてしまった。
住友商事の金融事業本部長、高井裕之理事は「東京市場にはニューヨーク、シカゴ、ロンドン、シンガポールのような海外市場と同じ基準を持って欲しい」と望む。ただ、一抹の不安も感じている。「私は東京市場が海外投資家に対して扉を開放することを望んでいる。しかし、難しいのはどんな人が扉をくぐってくるかはこちらでは選べないということだ」。
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